自然流会心の一局

自然流会心の一局―最新自戦譜を徹底解説!! (PERFECT SERIES)ちょっと古い本ですが、中原永世十段著の自戦記集です。収録されている自戦記は全8本と少ないのですが、その分充実した解説。自然流と称される中原さん独特の将棋を堪能できます。

特に中原さんが独自で開発した戦型が中心となっていて、他ではなかなか見ることのできない自戦記揃いです。

具体的な内容は下記になります。

1:対四間飛車での独特な6筋位取りを2本。
(実際は6筋の位取りに対して、四間飛車側が反発する将棋)

2:中原流相掛かりを2本。
(相掛かりで3筋の歩を突き捨ててから銀を繰り出す、一時流行した形)

3:横歩取り▽8四飛戦法(中原囲い)を1本。
(いまだに流行し続ける横歩取り後手番の中心的存在となる囲い。凄いですね。)

そして、矢倉・ひねり飛車・横歩取りを各1本ずつです。では内容を見ていきたいと思います。

 

まず6筋位取りですが、序盤から激しい将棋で見ていて楽しく、また応用も利く筋が多いので面白いです。戦場が玉に近いので、指しこなすのは難しいですが、振り飛車側も囲い終わっていない所での戦いなのでけっこう有力だと思います。居玉で攻めるなどのアレンジも効きそうで、妄想がふくらむ形ですね。

次に中原流相掛かりは、以前紹介した「消えた戦法の謎」にも載っている戦法で、つまり消えた戦法なんですけど、その攻め筋は鋭く厳しいものが多いので勉強になります。消えた戦法と言っても、完全に消えたわけでもなく、部分的な定跡としてはよく見かけますねえ。

 

そして横歩取り▽8四飛戦法は、▽8五飛戦法の前身となった戦法です。▽8五飛の登場で影が薄くなったものの、最近では改良された▽8四飛が復活してきており、その優秀性が再確認されているところでしょうか。

この当時の▽8四飛戦法は、5筋の歩を突かずに▽5四飛と回り、両桂を使って攻めるという感じのものでした。初めて「中原囲い」を見たときは、物凄い違和感の感じる囲いだったんですが、今となっては普通に見えるのが不思議です。

あと、先手番では使わないのはどうしてだろうという気もしますね。ネット将棋ではたまに見かけますが。と思ったら最近やっとプロでも指すようになってきましたね。

ちなみにプロであまり指されなかった理由は、たしか横歩取りなので後手の3筋の歩が切れており、中原囲いにすると常に▽3八歩のような手が生じているから損だと思われている、と聞いたことがあります。たしかにそんな手筋をプロの実戦でも見かける気がしますね。

このほかに、8本の自戦記から取り上げた「次の1手問題」が20問、棋譜が10個付いています。自戦記の文章はノーマルですが、扱っている将棋はアブノーマルなものばかりで、変な形が大好きな自分は、つい何度も読んでしまう一冊です。