ぼくが最も愛する棋士「米長永世棋聖」著の、居飛車対振り飛車の対抗形に絞った自戦記集です。
ぼくは自戦記を読むのが大好きなので、けっこう色々な自戦記集を読みましたが、この棋書が断トツで面白いです。
この本のサブタイトルは「さわやか自戦記書き下ろし」となってるんですが、ここがすでに伏線になってます。
米長先生が若い頃は、泥沼流だとかさわやか流だとか言われてたのでこういうタイトルになったんでしょうけど、この本の内容はさわやかとは全くの正反対なんですよね。
一言で言えばもうドロドロの内容です。
指し手の方も、もちろん泥沼流のドロドロなんで、もうなにもかもドロドロしてます。そんなすんごいドロドロの内容を、少しだけ本文中の対升田幸三戦より抜粋。
ただ、如何せん、そのような作戦はこの私には通用しない、
ということがまだわかっとらんようだった。
(中略)
以下、桂を捨てて角を成り込む。
これには流石のヒゲのおじさんも驚いたようであった。
あの升田先生をヒゲおじさん呼ばわりするとは凄いですよね。全編通してこんな感じで、読み物として面白いのはもちろんのこと、解説もわかりやすくて良いです。
棋譜が古いので、戦型も玉頭位取りや左美濃が多いですが、米長先生の独特な玉頭戦の真髄を味わうことができる内容です。
あの大山名人ですら、米長先生の玉頭戦は避けたらしいですからねえ、まさに絶品です。ちなみに収録されている自戦記の数は、全部で21本。この棋書を読めば、間違いなく米長ファンになること請け合いです。
では最後に、この本で一番印象に残ったセリフを紹介してお別れしましょう。
第10図で、あなたならノータイムで、また何時間考えようとも、
ここは▲5六同金だろうと思う。私はそうは指さなかった。▲6三歩成。どうだ、この俺の感覚は!!
最高ですね。この棋書はぼくにとってのナンバーワン棋書です。
ご冥福をお祈りいたします。
将棋連盟
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推奨棋力:5級以上。