渡辺明の居飛車対振り飛車Ⅰ

渡辺明の居飛車対振り飛車〈1〉中飛車・三間飛車・向かい飛車編自分が棋書を買う時の基準として、「初心者向け以外なら買う」というのがあります。つまり選考基準は低く、だいたい新刊は買っているんですが、いつも迷うのはこの「NHK将棋シリーズ」。

内容は良い棋書が多いシリーズではあるものの、初心者向けが多いのもこのシリーズ。そんな中では、この棋書の元となっている将棋講座は、久しぶりに毎週観ていて、内容は中級者向け。数多くの戦型を非常にわかりやすく解説していて面白かったですね。

かといって本になったところで面白いかどうかは微妙なラインと感じたので、買うのをためらっていたんですが、思い切って買ってみたところ、中飛車編のみ非常に面白い内容となっていました。
Ⅰ、Ⅱと2冊構成になっているものの、中飛車編だけ面白い。

どう面白いかというと、以前紹介した名著「消えた戦法の謎」のような作りになっているからです。というわけで、第1部 中飛車編からご紹介。

 

<第1章 急戦はなぜダメか>

まずは▽4四歩型中飛車対急戦の解説から始まります。

最もオーソドックスな▲4六銀急戦

それを改良した▲4六金急戦

▲3八飛▲4六歩型急戦

結果としてそこそこうまくいくものの、居飛車穴熊の方が良いということで衰退。

以上のように非常にわかりやすく、かつテンポ良く進んでいきます。

<第2章 居飛車穴熊の猛威>

そして▽4四歩型中飛車VS居飛車穴熊の解説へ。ここでは▽5三銀型と▽4三銀型の2つを解説していますが、穴熊の勝率の高さが際立ち、衰退したという流れを見せてくれます。

<第3章 ゴキゲン中飛車、居飛車穴熊を撃退>

そしてゴキゲン中飛車の登場により、居飛車穴熊が消えていく理由の解説です。何気にこの章は非常に大事な内容と思います。なぜなら初段前後だと未だにゴキゲン相手に穴熊に組んでくる人が多いからです。ちなみに居飛車穴熊に対するゴキゲン中飛車側の指し方は、自分の得意形でもありオススメですが、その理由をこの章で解説しています。

<第4章 ゴキゲン中飛車超急戦型>

そして今度は、穴熊をあきらめた居飛車が急戦を目指す形へ。色々とあるところですが、本書では以下の3つに絞って解説されています。

▲4六銀型急戦

▲5八金右型急戦

▲7八金型急戦

それぞれ今でも指されている形なので難しいですね。本書でも解説というよりは紹介に近い程度の内容にとどまっています。(現代の主流である超速▲3七銀は当時無かったので解説はありません)

<第5章 丸山ワクチンの攻防>

そして丸山ワクチンの登場です。佐藤新手の解説から始まり、遠山流の解説で終わります。

<第6章 居飛車▲4七銀型の新対策>

何故かここで4七銀から3六、4五と出て行く急戦形(押さえ込み?)の解説へ。まあタイトル戦でも指されているので、解説されていても不思議は無いのですが、結局やや中飛車指しやすいというような感じで終わっています。順番的に丸山ワクチンの前な感じもするんですけどね。

<第7章 ゴキゲン中飛車の実戦>
そしてラストは渡辺竜王の実戦解説。佐藤棋聖との竜王戦からの抜粋もあるので、短いながら充実の内容でしょうか。

以上が中飛車編です。個々としては内容は薄いものの、中飛車の歴史をわかりやすく実感させてくれる良い内容でした。念のため、三間と向かい飛車を軽くご紹介。

第2部の三間飛車では下記のラインナップ。

三間飛車対居飛車超急戦

三間飛車対居飛車急戦

三間飛車対居飛車穴熊

早石田急戦

第3部の向かい飛車は、ノーマル向かい飛車に居飛車穴熊は危険→左美濃へ、というだけの内容です。

2部と3部は正直読む必要は無いですが、全体としてサクッと読める感じでいいですね。できれば中飛車編のみ、たっぷり2冊分解説して欲しい内容でした。