新鋭振り飛車実戦集

新鋭振り飛車実戦集 (マイコミ将棋BOOKS)2008年当時のフレッシュな四段陣の自戦記集「新鋭振り飛車実戦集」。本書は、戸辺四段、遠山四段、長岡四段、高崎四段の4名による共著です。それぞれが自戦記を3本ずつ掲載しています。

ポイントはたまに入る「研究」のページ。所々で各自の研究をそこそこ詳しく解説しています。最低でも1ページ、長くて4ページ程、実戦から離れて解説してあります。だいたい序盤の変化についての研究ですね。

戦型的には、やはり最近の将棋らしくゴキゲン中飛車や石田流が多い感じ。というところで、内容に触れていきたいと思います。

 

まずは戸辺四段から。ひふみんの1000敗記念の棋譜から始まります。この記念の対局、実際に棋譜を見たことが無かったので、まあスタートとしては話題性もあって面白いです。丸山ワクチン対ゴキゲンから向かい飛車へと変化する形で、序盤の研究ページもありそれなりに参考になる内容。

残りの2つの棋譜は最新形ではないので、まあ普通。この棋書全体に言えることとして、せっかく新鋭4名で書くのだから最新形だけにしてほしかったなと。

 

次はBIGLOBEの動画配信「ご主人様、王手です。」でブレイクした(?)遠山四段。

彼の自戦記の中で注目なのは、対森内名人のゴキゲン中飛車ですね。なんといっても遠山流と呼ばれる指し方があるわけで。しかし残念ながら本譜では、「そこに絞って研究されている気がして回避」とのこと。でも「研究」ページとして4ページ使って遠山流を解説してあります。

この研究ページが本書最大の見所でしょうか。最近はゴキゲンと言えば丸山ワクチンなので、微妙にマイナーな遠山流は強い武器になりそうな気もします。実際に自分も早速実戦で投入し、研究ページ通りに進んで快勝したのでオススメしておきます。

 

さて、3人目の長岡四段は3二銀型四間vs急戦に絞った内容。定跡書のような内容なので、自戦記3本では少ない感じですが、まあ内容を絞ったのは評価できるでしょう。

そしてラストは九州男児の高崎四段。この4名の中では最も力強い将棋を指す、将来性有望な棋士だと思ってます。(※この記事は2008年に書いたのですが、現在では戸辺さんが頭ひとつ抜けた感じになっていますかね。)

内容は3局とも▲四間飛車vs▽居飛車穴熊。1局目のみ▲7八飛と寄っての反発で、他2局は藤井システム。2局目は先日の羽生-久保の王将戦に似た形。それぞれ勉強にはなりそうな内容でした。

というわけで、総評としては全体的に普通な感じ。もう1本ずつ自戦記があれば、内容に厚みがでて良かったんじゃないかなと思います。