相振り飛車の定跡書の定番「相振り革命」シリーズです。
非常に明快で読みやすくてわかりやすく、相振り初心者から上級者までオススメできる1冊です。
最近は、居飛車党でも後手番では相振りの選択肢がでてきているので、居飛車党・振り飛車党問わずに読む価値アリではないかと思います。
それでは各章ごとに、見ていきたいと思います。
第1章 現代相振りの考え方
ページ数こそ短いですが、相振りの現代に至るまでの進化の過程をとてもわかりやすく解説してくれています。
金無双が減って美濃・矢倉が増えていく過程、三間が減って向かいや四間が増えていく過程などが、実にスッキリと理解できます。相振りの勉強の入り口としては、最適な作りですね。
第2章 速攻矢倉崩し後手▽3三角戦法
オーソドックスな相向かい飛車の戦いにおける、先手からの速攻系の将棋を解説しています。ここを読むだけで、矢倉の崩し方、その受け方についての基本的なことがわかります。
まさにこの章は相振りに必要な最低限の知識の集大成になってます。ここを読むだけでも、それなりに相振りが指せるのでは。
第3章 端歩の考え方
相振りでは、よく自玉側の端歩をどうしようかと悩むものです。今までは、自玉が金無双以外の場合は危険なので避けていましたが、ここを読めば、それ以外の囲いでどんな場合に端歩突きが成立するのかよくわかります。
まず囲い別の端攻めに対する強度の解説から、どのような局面なら端歩を受けてもいいのか、段階を踏んでの解説となっているので非常にわかりやすいです。端歩の有無は終盤に効いてくるので、これを知っていれば相当大きいと思います。
第4章 ▽3三角戦法対先手矢倉
この棋書のメインとなっている章で、全体の半分近くのページが割かれてます。▽3三角戦法からの派生の形、金無双・美濃・矢倉・穴熊の4節に分かれており、内容もやはり明快でわかりやすいです。
所々がヤラセ手順的なのは多少気になるが、プロの実戦譜の解説も織り交ぜてあって説得力も高いです。
また、「この形では8六飛と浮くより8八飛と深く引くのをオススメする。」というようなワンポイントアドバイスも随所に盛り込まれています。力戦になりやすいこの戦型としては、こういうのは非常にありがたい所ですね。
第5章 先手中飛車対策
居飛車党が最も気になるのが、この章じゃないでしょうか。後手ゴキゲン対策はそれなりに進歩してきてますが、先手ゴキゲンでは1手の差で成立しないなんてことが多くて困るところです。先手ゴキゲンに対して相振りでうまくいくなら、まさにヨダレものです。
で、ヨダレながしながら読んだんですが・・解説は中飛車からの急戦対策しかなく、中盤以降については全く語られておりません。それもほとんどが後手が向かい飛車で失敗(もしくは苦しめ)の形の紹介で、最後に4ページだけ(涙)
結局、三間にすれば一番安全だよって解説で終わってるだけでガッカリでした。その失敗例なら、すでに経験済みだよ!(涙)って感じで、三間でイイってのは鈴木八段の本に書いてあったなあ(淋)ってことで読む価値はありませんでした。残念。非常に残念です。
残りの3章は、現代の相三間飛車・山崎流銀冠・相振り阻止作戦の3つですが、あまりページもさかれておらず、参考程度でしょう。
個人的には「糸谷流右玉(対振り右玉)を指そうと思ったらなんとなく。」(山崎六段談)の山崎流銀冠は指してみたいです。相振りでは、おそらく銀冠が最強の囲いなので、実現すれば有力な作戦と思われます。
ちなみに今の山崎六段のコメントは、どこかで読んだものをぼくが適当に書いたので正確ではありません。念のため。
というわけで以上です。
なんだかんだで読みやすくて面白いのでオススメです。やっぱりMYCOMの本は安定感ありますなあ。
推奨棋力:10級以上。