相振り飛車で左玉戦法 居飛車で右玉戦法

相振り飛車で左玉戦法 居飛車で右玉戦法 (将棋最強ブックス)相振り飛車での左玉戦法と、相居飛車での右玉、さらには対振り飛車での右玉の棋書になります。右玉・左玉系は棋書が限りなく少なく、その割にはたまに出会う戦法である為、指さない人であっても対策知識として知っておきたいですね。

惜しむらくは、これが創元社の将棋最強ブックスシリーズであるということ。このシリーズは、アマ中級者向けに戦法を紹介する程度の内容であることが多いので、マニア的には満足できない内容の棋書が多いです。

その反面、この棋書のようにたまに貴重な内容であることもあるので、買うかどうかの判断が難しいシリーズでもあります。

本書もやはり定跡書としては網羅している変化が少なく内容的には不十分でしたが、左玉的にはおそらく史上2冊目の棋書であること、右玉の棋書はたまに出版されるものの、5年に1冊出ればいいかなというレベルであること、さらに対振り右玉としては初の棋書になることを踏まえると、希少価値という意味で買って悔い無しというところでしょうか。

それでは内容を見ていきたいと思います。

 

【第1章 相振り飛車で左玉戦法】

先手で角道クローズタイプの振り飛車を指す時に、必ず通る関門が下図。

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そう、3手目▲6六歩に対して▽3二飛とする相振り飛車です。この形は最近プロ間で、後手の勝率が良い形ということもあり、先手としては嫌な変化の一つだと思います。

しかしこの左玉戦法というのはこの序盤からスタートになるので、もしこの形に苦手意識のある振り飛車党の人であればかなりおすすめの戦法です。本棋書では、2種類の左玉を紹介しています。

 

<▲7六銀・▲6七金型の左玉>

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まずは上図の形を解説しています。本書ではどちらかというとメインの左玉戦法として、対金無双、対美濃囲い、対穴熊と3パターンの解説がありますが、左玉的にはマニアックな組み方になりますね。

この左玉は金が三段目に上がっている為、指しこなすのが非常に難しくあまりおすすめできません。次に紹介する左玉こそが左玉の筆頭で、その左玉を目指したものの6筋の位が取れなかった場合に、この▲6七金型左玉にするという使い方が一般的です。

 

<高田流左玉>

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高田流と呼ばれる左玉の解説です。本書ではサブ的な紹介となっており、対金無双しか解説が無いのが残念なところ。実際はほとんど対美濃囲いになると思います。

左玉は角交換に強い形なので、序盤から隙あらば常に角交換を挑んでいきますが、避けられることも多く、角交換ができなければ上図の形を目指します。仮に角交換していても、▲5七角と打つことがあるくらいの好形です。

ここまで組めれば、大抵は作戦勝ちになっているはずなので、▲7五銀から▲8四歩などの仕掛けを狙っていきます。対美濃囲いでは端も絡めるとより効果的です。

 

【第2章 相居飛車で右玉戦法】

本書では、ただでさえレアな右玉の中でも、いままでほとんど解説されたことのない、超レアな右玉の解説になっています。実際に指したら、きっとものすごい負けそうだけど指してみたくなる珠玉の右玉たちです。

 

<矢倉編>

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矢倉編の右玉の出だしが上図。普通は後手番で使う右玉ですが、本書の右玉はまさかの上図からの先手番の右玉。ここまで▲6九玉が入っていないことを除けば、いたって普通の相矢倉戦ですが、ここから右玉へ。

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完成図がこちら。佐藤九段がタイトル戦で指していたような気がする右玉ですね。これはかなりレアタイプ右玉で、相当に勝ちづらい形だと思いますが、優勢になる展開のみ解説があるので、なんとなく勝てそうな気がしてしまいました。ここだけで30ページも解説がありましたね。

 

<▲7八金型編①後手角交換>

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そして次が何故か普通の右玉の角交換型。この棋書は最初に変な形を紹介してから本筋に入るくせがありますね。まあこの形なら右玉伝説でも読んだ方がいいでしょうね。

 

<▲7八金型編②後手角不交換>

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次はノーマル右玉の角不交換型。どちらかと言えば角交換しない形の方が出現率高いと思います。基本的には角交換は右玉に有利に働くことが多いですね。

 

<陽動振り飛車編>

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相矢倉の出だしから▲8八飛と向かい飛車にする陽動振り飛車。右玉の項にあるので、てっきりここから右玉になるのかと勘違いして読み進めていたところ、組み上がり図がこちら。

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なんとまあ綺麗な美濃囲いになっているではありませんか。まれに見る陽動振り飛車成功例ですね。陽動振り飛車のここまでの成功例は逆にレアなので、貴重かもしれないですね。

 

<後手が角交換してくる場合>

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そして右玉の項のラストは、後手番一手損角換わりの先手番での端歩位取り右玉。組み上がりは下図。

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これは一時期トッププロでも指されていた形で、端の位は大きな主張点になります。自分も一時期は指していましたが、正直に言えば「この端の位のおかげで勝利した」というような接戦は一般人レベルではそうそう起こらないので、過度の期待は禁物です。

 

【第3章 対振り飛車での右玉】

そして対振り右玉、通称糸谷流右玉の登場です。棋書として解説が載るのは初めてだと思います。なぜか①対向かい飛車、②対三間飛車、③対ゴキゲン中飛車、以上3パターンの解説。

ぼくも対振り右玉はたまに指すので分かりますが、まず四間飛車には使いづらい戦法です。そして向かい飛車にはかなり組みやすく、対ゴキゲン中飛車には裏技的に使いやすい(ただし勝ちづらい)戦法です。これを考慮しての上記3パターンの選出と思われます。

 

①対向かい飛車の右玉

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まずは対向かい飛車の右玉から。まあ飛車先を早く決める人でないと出会わないとは思いますが、飛車先を飛車で受けているので振り飛車からの早い動きはしづらく、右玉の駒組みはしやすい形です。

 

②対三間飛車の右玉

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対三間飛車では、上図のように3筋を▲2六金で受けるのが特徴的な形です。これぞ糸谷流といった構えですね。この金と玉が一丸となって入玉していくような展開もあり、指しこなすのに独特の感覚が必要とされる戦型です。

 

③対ゴキゲン中飛車の右玉

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中飛車に対して使いやすいのも、この右玉の特徴。5筋を4七と6七の銀で受ける形になるので、中飛車からの早い攻めが難しく、右玉に組みやすいのです。

そして上図のように▲6八金と構えるのもポイント。このように相手の動きに合わせて5八や6八、または7八に金を使う展開を、常に考える必要があります。本譜では▲5九飛の含みをもたせての▲6八金ですね。対四間飛車でも▲6八金型の方が良い場合が多かったと思います。

 

以上です。内容としては各戦法の指し方の一例を紹介しているだけに過ぎない、と思って読んだ方がいいですね。しかしこの棋書にしか載っていない、面白い右玉や左玉があったので楽しく読めました。

ただし序盤の駒組み手順に違和感を覚えるものが多かったのが気になりますね。まあこれらの戦型に関しては、独自の感性が前面に出やすいのかなあ、、と思っておくことにします。

 

推奨棋力:10級以上