横歩取り超急戦のすべて

横歩取り超急戦のすべて飯島七段渾身の最新刊は、将棋世界で連載中の「横歩取り裏定跡の研究」を書籍化したもの。とにかく横歩取りのありとあらゆる裏の変化を追求しており、ロマンあふれる内容です。

自分も10年くらい前に色々こういう横歩取りの裏定跡の研究にハマりまして、日夜研究していたのを思い出します。

続編も出るようで、シリーズ第1巻となる本書では横歩取りの基本図(下図)より、①▽8八角成▲同銀▽3三角とする▽3三角戦法、②▽8八角成▲同銀▽3八歩▲同銀▽4四角とする▽4四角戦法、③▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角とする▽4五角戦法、以上3つの戦法に焦点を絞っています。

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続編ではさらに④ここから▽4一玉とする▽4一玉戦法、⑤相横歩取り、へと続く模様です。④の▽4一玉は佐藤九段が指しているのを見たことがあるような気がしますね。それでは本書の内容を見ていきたいと思います。

 

<第1章 ▽3三角戦法>

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角交換からすかさず角を打つこの戦法、たまに使う人がいますよね。自分は横歩取りのこういう危険な指し方に対しては一貫して手堅く指して持久戦に持ち込むことにしています。つまりここから、▲8七歩!と指します。

この1章は40ページもあるのに、この変化はなんと2ページしか書かれておらず、持久戦になり互角、としか書かれていませんでした。まあ互角かもしれないけど、後手だけ角を手放しているデメリットが持久戦になるとじわじわ効いてくると思ってます。

それはさておき、その他38ページ分には気になる超急戦の変化がいっぱい書かれています。例えば昨日の電王戦第3局の変化に似ている下図。

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こういう変化がいろいろあるので横歩取りは怖いんですよね。ここは▲6八玉と受けるのが第一感ですが、▽7八角成〜▽6八金の強襲があり、形によってはそこで▲同玉が正解だったり▲8九玉が正解だったり、そもそも正解が無かったりと、かなり難解です。

ちなみにこの形は後手の飛車が近いので▲8七銀!が正解みたいで、▽3八歩で下図。

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▲3八銀といい▽3八歩といい、知らなければぜったいに指せない手の応酬ですが、ここで▲同銀だと以下▽8七飛成▲同金▽6七角成(下図)が詰めろ飛車取りになり後手勝勢。

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なので▽3八歩は▲同銀と取れない、ということですが、じゃあ最初に▽3八歩を入れておいたら?

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とか考え出すと、もう眠れないですよね。こういうのが横歩取り超急戦の研究の楽しいところです。

 

<第2章 ▽4四角戦法>

というわけで第2章では、そのいきなりの▽3八歩を突き詰めていくところから始まります。つまり、▽3八歩を入れてから▽3三角としたい、でもそれなら▽4四角の方が優る、ということで登場したのがこの▽4四角戦法なわけです。

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これにも自分としては▲8七歩で持久戦に持ち込むようにしていますが、▽4四角型だと飛車の素抜きの筋があり、相手の対応によっては持久戦にならないこともありそうですね。

本書ではこの変化を含め、かなりのバリエーションに対して書かれていますが、先手良しがやけに多かった印象です。1章の▽3三角戦法の方が、▲8七銀と受ける以外は後手良しだったのでハメ技としては有力な気もしますね。

 

<第3章 ▽4五角戦法>

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やっとメジャーな戦法の登場です。一時期谷川先生のおかげで流行った戦法でしたが、いまや将棋倶楽部24でも見かけないですね。

自分も「過去最も研究した戦法は何か?」と聞かれたら「横歩取り▽4五角戦法」と答えるほど研究をしましたが、結局後手からの必勝パターンを発見することができずに力尽きました。

さてこの章ではまず最初に谷川先生の実戦紹介と、それに対する現在の目で見た回答から始まる。なかなかいい感じの導入ですね。ちなみにこの章は約100ページあり、本書の半分ほどにもなるので、つまり本章がこの本のメインコンテンツとなっています。

 

そしてこの実戦解説の導入の次は、最初の▽2八歩について詳しく書かれています。ここは必読ですね。特に▽2八歩を手抜いて▲7七角!の変化は考えたことも無かったですね。

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まあ最近のNHKの講座でやってたので知っていましたが、しかし▲7七角に▽7六飛で互角と書いてありますね。講座では▽8八飛成しか解説していなかったような、、

また、▽2八歩と打たないとどうなるかとか、様々に細かい変化も書かれています。個人的には▽3八歩からの▽4五角戦法がどうなのかも書いておいて欲しかったですけどね。なんで前章であれだけ追求したのにここで無いんだろう?

そしてなんと、▽4五角本編の前の各種急戦の解説でここまで67ページ、ここからの本編が36ページという構成になってます。なんと本編前に倍近くのボリュームがあります。それだけメイン定跡以外が複雑だということですね。

 

そして巻末に本書の復讐として、次の一手問題が18問と、各章を調べる時に便利?なチャートが付いています。

この本が10年前にあれば、、と思う一冊。しかし振り飛車党に転向してしまったから、指すことは無いかもなあ、、

 

推奨棋力:5級以上