今の将棋界に決定的に足りないもの、それは死と血であると言えます。死を覚悟して血を流しながら対局するのが、将棋の真の姿なのです。
そんな将棋の基本を思い出させてくれるのがこの漫画「月下の棋士」です。今となっては古い漫画となってしまいましたが、絵は今見ても古さを感じませんし、将棋を知らなくても面白い内容です。
文庫版で再版されて全20巻。非常に長いストーリーで、中盤がマンネリ気味なのが欠点ですが、序盤の奨励会入りからプロ入りするあたりと、終盤のA級での戦いは濃ゆさ満点です。
主人公は坂田流向かい飛車で有名な坂田三吉がモデルの人の孫という設定で、この漫画がドラマ化された時はV6の森田君が演じてました。
一見、主人公が濃ゆいのかと思いきや、そうではありません。むしろ主人公は薄いキャラで、彼を取り巻く人物達と対戦相手達が、濃ゆさ満点で迫り来るのです。
この、「主人公が一見ややウザくて読む気しない」と思われがちなのが残念なトコロで、実際は主人公なんてどうでもいい漫画です。
そういうわけで、そんな主人公「氷室将介」が田舎から出てきて奨励会入りする所から物語は始まります。特例で初段で入会した彼を最初に待ち受けるアブラギッシャーは、29歳の若さで現役A級のまま亡くなった故村山聖九段がモデルの「村森聖」。
まだ奨励会なのに、いきなり死を覚悟したチャレンジャーの登場です。氷室との対局には遺書を用意し、スキンヘッド+白のスーツという死に装束をイメージしたスタイルで登場。対局中はもちろん、血反吐を吐きながらのデスマッチ。
これこそまさに将棋の基本スタイルというわけですね。奨励会員の人は、ぜひトライしてみてください。
うーん、また読みたくなってきた。
月下の棋士 全20巻完結(文庫版) [マーケットプレイス コミックセット]
推奨棋力:奨励会初段以上。