東大将棋ブックス 四間飛車道場〈第9巻〉持久戦VS穴熊

四間飛車道場〈第9巻〉持久戦VS穴熊 (東大将棋ブックス)マニアックな人気を誇る隠れた名著、それが四間飛車道場の第9巻、持久戦VS穴熊です。

この東大将棋ブックスシリーズ、とにかく巻数が多いです。将棋棋書史上、最も多いシリーズで、当時四間飛車というか藤井システム全盛の時代だったせいか、この四間飛車道場という四間飛車だけのシリーズでなんと全16巻!

シリーズ全体では、まさかの全38巻!!という信じられない巻数を誇ります。誇りますけど、全体的に内容が微妙なのが最大の欠点。まず掲載している手順が膨大すぎて、読み始めるとすぐ眠くなります。

また、これが本筋、それは本筋でない、という「本筋」という曖昧な表現で最善なのかどうかが非常に分かりにくい。というか、そもそも掲載手順自体が曖昧で、全体的に疑問の残る大作シリーズですね。

しかし最近、四間飛車穴熊を指すようになって、本棋書にしか載っていない特殊な形が掲載されていることに気付きました。そのせいか、Amazonでの中古販売価格はなんと3,300円。

明らかに高いですが、それもそのはず、この棋書に掲載されている3つの戦型は、本当に他に無い内容だからです。

全て四間飛車穴熊対居飛車ですが、居飛車の作戦が①天守閣美濃からの4枚美濃、②深浦王位がタイトル戦で広瀬六段に使って勝利した切り札、角田流と呼ばれる地下鉄飛車を発展させた戦法、③ミレニアム&トーチカ

どれもマニア心をくすぐる内容ではありませんか。そして全ての形に言えることですが、四間飛車穴熊側の対策が確立していないものばかりなので、居飛車としてかなり有力な指し方ですよね。というわけで内容を見ていきたいと思います。

 

<第一章 持久戦VS穴熊の駒組み>

まずは持久戦の駒組みを紹介しています。3つめのミレニアム系以外では、下図のタイミングで▲9六歩と様子を見ます。

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まずはこの形で▽9二香を見届けようということですね。対して▲8六歩とすれば、この棋書では四枚美濃と呼ばれる、天守閣美濃からの4枚美濃囲いへ。

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もしくは下図のタイミングで▲6六角と出るのが、角田流と呼ばれる指し方。

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そして▲9六歩とはせずに▲6六角と出るのが、ミレニアム系。

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まあ先手番ならミレニアムでも▲9六歩くらいで作戦負けにはならないと思いますけどね。

というわけで、ひとつひとつの戦型を見ていきます。

 

 

<第二章 四枚美濃>

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基本図はこの形。ここで①▽6四歩、②▽4五歩、③▽2二飛と3パターンの指し方を章に分けて解説しています。

いかんせん解説の内容を読むと眠くなるので、どうしても読み切れないですが、目を通した感じでは四枚美濃は想像以上に硬く、居飛車優勢の分かれが多いような内容でした。

ちょっと玉の位置が違うだけで、攻め方が見えなくなったりしますからね。これを指す人は見たことがないですが、思ったより有力に見えます。銀冠を指して定跡に乗るよりは、この方が面白い気がするので今度指してみようかな。

 

<第三章 8筋交換型>

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▲6六角から8筋を交換しにいくのが、角田流と呼ばれる戦法です。本書では8筋交換型として紹介されています。

そして一歩を手持ちにしながら手順に▲5七角とするのがこの戦法の骨子。

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ここからは普通の地下鉄飛車と同じように指すのですが、もう8筋で一歩持っている時点で、通常の地下鉄飛車よりかなり形がいいですよね。

そして一歩を手持ちにすることにより、端攻めに使えるのも大きいですが、2筋での攻めにも使うことができます。それが▲2四歩▽同歩▲2三歩という攻め筋。

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これは鈴木八段の自戦記にも掲載されていた手順で「この仕掛けをうっかりして形勢不利になった」と書かれているほどです。

他にも▲2四歩▽同歩▲2五歩の継ぎ歩攻めなど、一歩を手持ちにすることによる効果は絶大です。広瀬王位が誕生した王位戦第二局で登場したことでも有名で、実際に深浦王位が勝っていることからも、かなり有力であることが分かります。

 

<第四章 ミレニアム>

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まずは第一章として、この▲6七金型ミレニアムを解説。ミレニアム自体がマニアックな戦法ですが、四間飛車穴熊対ミレニアムとなるとかなりマニアック。

解説されている内容としては、居飛車優勢になる展開が多く、これも想像以上に有力ですね。振り飛車側としては、早めに5筋あたりで反撃をする形を作る必要があるのかもしれないですね。

つまり囲いに手数がかかっている為、平凡に進めると反撃の味が少ないのが気になります。しかし本書の手順は、振り飛車はかなり無策なので、改善の余地は多いと思います。

そして第2章は金銀密集型ミレニアムとして、旧式ミレニアムの形を解説。

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個人的にはこの形をトーチカと呼んで、前述のミレニアムと区別しています。三浦九段のトーチカ戦法という棋書があったわりに、トーチカという名称は全く根付いていないのが不思議です。

この形はトーチカという名前にぴったりだと思うんですけどね。そして自分のノーマル四間飛車対策がこのトーチカなんですが、四間飛車穴熊に対しては使ったことなかったですね。

なんとなく囲いの堅さで少し負けているような気がするのと、誰も使っているのを見たことが無いというのが、ぼくが使わない理由な気がします。

まあでも、言われてみればはっきり悪い道理があるわけでもないので、これもまた機会があったら指してみたいと思います。

 

以上、マニアックな棋書「四間飛車道場 第9巻 持久戦VS穴熊」でした。古本屋で安く売っているのを見かけたら、是非ゲットしてください!

推奨棋力:5級以上